「蛍丸が蘇るまで」 (2015年8月23日菊陽町図書館での講演内容)
2015年8月23日菊陽町図書館で行われた
【第2回、初心者向き日本刀講座「熊本ゆかりの刀 ~同田貫と蛍丸~」】
での講演内容をまとめたものです。
・入佐神社
・阿蘇家の系図
・恵良館跡地
・恵良城跡
中身の瓶は皆さんに「開けてもらった時に驚いてもらえればいいね!」と、最初は公開しませんでした♪
~製品づくりそして出荷~
【第2回、初心者向き日本刀講座「熊本ゆかりの刀 ~同田貫と蛍丸~」】
での講演内容をまとめたものです。
2015年2月末、友人からこんなことを言われました。
「蛍丸っていう刀知ってる?矢部(現在の山都町)に凄く関わりがある刀なんだけど」
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筑前多々良浜での戦いでの事。
恵良(阿蘇)惟澄[のちに阿蘇大宮司を継ぐ]は苦戦を強いられ、追いすがる敵を斬り払い、危地は逃れたものの、刀はささらのように刃こぼれを生じてしまった。
惟澄が矢部(現在の熊本県山都町)の入佐の城に戻った夜、無数の蛍が刃こぼれをし刀の上に集まり消える・・・という夢をみた。
次の朝、欠けていた刃が元通りになっていたことから、惟澄はこの刀を「蛍丸(ほたるまる)」と名付けた。
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私はそこで初めて「蛍丸」の伝承を聞き、「地元にそんな綺麗な伝承があったんだ!」と、ちょっと感動してしまいました。
もちろん、あるゲームが流行ってるからっていう話もこの時聞きました(笑)
でも、ゲームの話は置いておいて、地元の人もあまり知らないこんなにおもしろい話で、「何か面白い事ができるかもしれない!」と思い、ここから「蛍丸」をお酒にするお話が始まりました。
~小一領神社の1000年祭~
次の日、社長にお酒に出来ないか相談してみると「ちょうど2018年に小一領神社の創建1000年祭があるから、その寄付事業で開発してみようか」
という話になったんですよ(^^)
小一領神社は通潤酒造から徒歩5分、阿蘇神社の分霊が祀られております。
小一領神社は寛仁2年(1018)年に創建され、昔は柳本大明神と称され現在の弊蔵の斜め前にありました。
最近では神社の建物の周りにハートマークの彫刻があることから、恋一路(こいいちろ)神社なんて呼ばれ、女性に人気のパワースポットにもなっていますよ♪
そんな小一領神社の坂本宮司にその旨を伝えると、
「私もせっかく山都町で宮司をやるご縁をいただいたのだから、山都町の為なら協力させていただきます」
と、色々と協力していただけることになったのです。
※「純米吟醸 蛍丸」の売上の一部は、山都町で阿蘇神社の分霊祀らるる「小一領神社」の創建千年祭に寄付されます。
~伝承と歴史~
次に伝承を調べることにしました。
というのも、私が地元にいながら「蛍丸」の伝承を全く知らなかったので(^_^;)
そこで、最初に相談したのが山都町郷土史伝承会の会長の田上さん。
古文書を一緒に調べてくださったり、文献を紹介してくれたり本当にお世話になりました。
【参考にした文献】
「恵良惟澄軍忠状」
「菊池傳記」(熊本県立図書館所蔵)
「阿蘇社と大宮司―中世の阿蘇」(阿蘇品 保夫 著)
「やべごうの歴史を語る」(井上清一 著)
「阿蘇の文化遺産 図録」
調べていく中で、熊本県立図書館が所蔵している「菊池傳記」の中に惟澄公の「多々良が浜の合戦」の様子が書かれていたのですが、
そこに「矢部の城」と出てきた時には鳥肌がたちました(笑)
そんな田上さんが教えてくれたのが、
「蛍丸に群がった蛍は、昼間惟澄と共に戦い、亡くなった多くの人々の霊ではないかと言われています。」というものでした。
このお話を聞いて、「蛍丸」のエピソードが益々ロマンチックに感じられ、歴史を調べるのがどんどん面白くなってきました(^^)
↓↓↓山都町郷土史伝承会の情報はこちらから↓↓↓
http://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/ijyuuhp/a0022/Oshirase/Pub/Shosai.aspx?AUNo=286&OsNo=15
~山都町(旧矢部町)~
中世の矢部町は阿蘇家が治めていました。
山都町矢部地区に阿蘇家関係の城だけでも14箇所もあったそうで、その中の入佐地区が今回のお話です。(11番)
2015年5月2日、田上さんに誘って頂いて矢部入佐にて郷土史の研修会に参加させていただきました。
研修内容はというと、
「阿蘇(恵良)惟澄のふるさと入佐を訪ねて」
まさに、知りたい内容盛りだくさん!
喜んで参加させていただきました(^^)
その研修からゆかりの地をいくつかご紹介します♪
・入佐神社
惟澄公が儀式なども行っていたであろう入佐神社は、弘安4年(1281)岩尾城城主阿蘇惟景が建立したとされます。
参加者の方が「惟澄さんは養子だったから儀式を覚えたりするのも大変だったかもね。何かあたふたしてる姿想像すると可愛いよね(笑)」と言っていたのが印象的でしたねぇ(^^)
蛍丸も儀式で使われたりしたのかな?
・ほたるの里
普段は車で通り過ぎるだけなので分からなかったですが、一日中入佐を歩きまわったお陰で道すがらこんな物も(^^)
私も毎年蛍の写真を撮りに来ている場所です。
昔からずっとホタルの里として、人々を楽しませてきたのでしょうね♪
・阿蘇家の系図
そして、お昼ごはんを食べた入佐の公民館ではこんな貴重な系図も見せていただきました!
もちろん「惟澄」の名前を見つけて大興奮してました(笑)
(普段は公民館には置いてありません)・恵良館跡地
写真の家が恵良館跡地です。
(現在は八本さん宅)
昔は城の近くの館に居住して、戦の時などに城に集まり出陣していったそうです
その八本さんの家の庭からの眺めがこの写真ですが、中央に写っている丘が全部恵良城跡!
今はただの丘にしか見えませんが、昔はこの丘の上に城が広がっていたそうで、城と言っても天守閣がそびえるようなものではなく、もののけ姫の”たたら場”のようなイメージだそうです。
そして、その丘の上に登ってみると、何も残ってはいないのですが、地面は不思議と平らでした。
阿蘇(恵良)惟澄公が蛍の夢を見たのかと思うと、何か空気も違って感じられました。
この研修を受けて、「せっかくだし入佐と惟澄公と蛍丸マップ作ろう!」ということになったのです♪
今は何も残っていない場所もありますが、足を運んでくさった時、何か感じてもらえると嬉しいですね(^^)
~デザインのお話~
ここで話がちょっと飛びますが、通潤のお酒は山都町にとことんこだわって、山都町でしか出来ない酒造りをしている造り酒屋です。
お米も全て山都町で契約栽培してもらっていますので、農家さんの顔から田んぼの場所まで分かっている状態で酒造りができています!
山都町の米を使い、山都町で酒にして、山都町の人に飲んでもら、喜んでいただける、まさに地酒冥利に尽きます。ということを毎回言ってます(^^)
↓↓↓ホームページで山都町のことをもっと知って頂けます↓↓↓
http://tuzyun.com/
↓↓↓ホームページで山都町のことをもっと知って頂けます↓↓↓
http://tuzyun.com/
さぁ、やっとデザインのお話です(笑)
さて、そんな酒造りをしている弊蔵にやってきた山都町の「蛍丸」の伝承。
こうなってくると、デザインだってやっぱり山都町の方にお願いしたいと思ったんですよ(^^)
そこでお願いしたのが、みずたまデザインカンパニーの小坂さん♪
この小坂さん、ご主人と一緒に山都町でカフェもされてるんです(^^)
↓↓↓みずたまカフェさんのホームページ↓↓↓
そんな小坂さんに伝承の内容をお話してデザインを考えて頂きました。
後日、最初に出来上がってきたデザインを見てビックリしました!
2つのデザイン案を持ってきてくれたのですが、今まで見たこともないデザイン!ひとつは刀が中に入ってたんです!
さらに「中に水を入れると面白いですよ(^^)」と小坂さん。
実際に水を入れてみると、刀が浮き上がってくるみたいにボヤ~ンと見えてきました!
「惟澄さんが“夢の中”で蛍が刀に集まってきたという話だったんで、刀が浮き上がってくる感じが夢の中みたいなイメージになると思ったんですよ。そこに表から見たら蛍が刀に集まってるみたいでしょ?この前から見ても後ろから見てもボヤーんとするデザイン、一度やってみたかったんですよ(^^)」
大まかなデザインはこれで即決でした(笑)
どうしても瓶にお酒の成分や製造年月は記載をしないといけませんので、刀の裏に表示をしようということになりました。
あとは、刀を中に入れるかどうかという問題でした。
(あえなく却下となった初期デザイン)
小坂さんは「瓶の中に入れたい!」
とおっしゃってたのですが、やっぱりお酒の中に何かしらが入るっていうのはあまり好ましくないというのと、品質管理の問題があり実現は難しいという結果になりました(-_-;)う~ん残念。。。
最終的に今の形、表には蛍・裏には刀のデザインに落ち着きました。
次にお願いしたのが“紫外線”の問題でした。
何故ここで突然“紫外線”!?と、思われるかもしれませんが、実は日本酒の天敵なのです。
日本酒に紫外線(太陽の光や蛍光灯の光から出ています)を当てておくと、数時間で黄色く変色してしまい、それだけで風味が飛んでしまうのです。
そして、今回使用したい瓶は無色透明のものなので自信をもって造った酒もすぐに悪くなってしまうという問題が出てくるのです。
ですので、光が入ってこないように、それを解決する方法を一緒に考えていただきました。
一番最初に案として出てきたのは「箱に入れればいいのでは?」だったのですが、何か簡単だけど普通で面白くない(-_-;)
色々意見が出てくる中で「刀だし、袋に入れてはどうか?」という案が!面白い!
さっそく近くで刀を持っている、社長の叔父である山下實さんに袋を見せていただきました(^^)
「刀の袋、見せてください!!」
って尋ねていくと
「刀じゃなくて、袋が見たいの???」
と不思議な顔をされてしまいました(^^;)
これを見ると
「一枚一枚袋作るの大変だろうなぁ」
ということに。。。。。
次に出てきた案としては、「包装紙で包めばいいのでは?」というもの。
というのも、昔は紫外線対策でどの酒蔵でも日本酒の瓶一本一本に包装紙を巻く、という文化があったからなんです!
これなら伝統の技術、包装紙を使って刀袋の形状を再現できると思いました\(^o^)/
ということで、さっそく包装紙で試作品を考えて頂きました。
試作第1号です。
黒い包装紙の中に蛍が舞っている様子を再現していただきました(^^)
ここまでで大体の形が見えてきましたので、あとは細かい点を詰めていきました。
「刀が修復されていく様子をラメ(ホログラム仕様)でキラキラ輝かせたい」
「包装紙の色は蛍が出る時間帯のミッドナイトブルーでどうだろうか?」
「紐の色は何色がいいか?黄色?赤?はたまた別の色?」
(こんな渋いバージョンもあったんです)
「せっかくだから遊び心が欲しい。」
「阿蘇家の家紋と通潤のマークを包装紙の中で蛍と一緒に舞わせたらどうか?」
バッチリ採用されました(笑)
そんな打ち合わせを重ねていき、
最終的にこのデザインに辿り着いたのでした。
・包装紙の色は蛍が舞う時間帯の色の“ミッドナイトブルー”
・赤色の紐は、通潤のイメージカラーでもあり、惟澄公が猛々しいイメージだったのと、沢山戦に行かれた歴史から、血も沢山見ただろう、というところから赤色に。
(ちなみに紐も手作り。提灯なんかに付いている房付き紐を作ってらっしゃる所。)
・刀のシールはラメ使用にし、修復されていく姿を再現
・お酒が入り正面から見ると刀がボヤ~っと見える。夢の中の様子を再現
こんな使用です。
(驚いて頂けました(^^)?)
とことん付き合っていただいた小坂さん夫妻に本当に感謝です!
~中身のお酒はどうしよう?~
デザインを作って頂いてる間に中身のお酒も考えなければなりませんでした。
通潤酒造の特徴は徹底した昔ながらの“寒造り”。
自然の寒さの中仕込みを行うため毎年10月末から3月頭までの間しか仕込みが出来ません。
「熊本で日本酒を造るのは、暖かいから大変でしょう?」
なぁんて言われたりもしますけど、通潤酒造がある山都町は標高500メートル、寒い時は零下12度まで下がることもあるんですよ(-_-;)
ですので、
「熊本なのにそんなに寒いんですね!?」
そんな環境の中、毎年9種類の酒を造っているのですが、その中で度数を調整して出すもの物もあれば原酒で出すものもあります。
また熟成度合いによっても変わってきますので、1種類の原酒から様々な味を作り出すことが出来ます。
その中からどのお酒が伝承にピッタリか、テイスティングしていきました。
冷酒向きがいいか?
熱燗向きがいいか?
和水したものがいいか?
原酒がいいか?
香り重視?
米の味がしっかり出てるほう重視?
伝承が残る入佐で栽培された米を使ったものにするか?
それとも伝承のイメージになぞらえた酒を選ぶか?
それを考えていった結果最終的に2種類に絞られました。
1・入佐の米だけを使った純米酒
2・入佐の米ではないけれど、伝承のイメージにピッタリだと思った純米吟醸酒
最後まで悩みましたが、やっぱり決めては伝承のイメージにピッタリだったことがあって「純米吟醸酒」でどうだろうか?
ということになりました。
※純米吟醸 蛍丸
蛍が刀を癒やしたように、純米吟醸酒の柔らかい味が私達の心を癒やします。
酒の後切れの良さは、癒やされて切れ味抜群になった「蛍丸」のイメージと重ねました。
蛍丸の名付け親、阿蘇惟澄公にもきっと気に入っていただけるお酒です。
~製品づくりそして出荷~
5月末いよいよ商品用の瓶が入荷しました\(^o^)/
写真は瓶詰め前に瓶を洗浄している様子です。
瓶詰めが終わってみるとこんな感じに(^^)
そしてこれにラベルを貼ると
デザイナーの小坂さんの思った通り、夢の中で刀に蛍が集まる様子がしっかり再現出来ていました\(^o^)/
そして、通潤は従業員数が少ないので、ラベル貼りから包装までは全て手作業で行っています。
一本一本丁寧に包装していきましたよ(^^)
そして最初の出荷目標を6月5日に設定し、蔵人皆で出荷準備を進めていきました!
次にイメージカットの撮影に行きました。
撮影場所はもちろん、入佐神社!
この1枚の写真を撮るために場所を変えたりアングルを変えたり、蚊に刺されながら100枚位撮りました(^_^;)
そんな蔵の中がバタバタしている6月の頭、今年も惟澄公の居城があった入佐地区に蛍が乱舞し始めました☆
実は私、毎年ホタルの撮影には入佐に行っていたので、伝承を初めて聞いた時も「入佐なら納得!」と思ったほどでした(^^)
今年は蛍丸の発売に合わせるかのように少し早めに乱舞してくれましたよ☆
そして2015年6月5日、「純米吟醸 蛍丸」発売開始いたしました。
発売まで本当に沢山の方々のお力を借していただきながら、このお酒を実現させることができました。
そして発売後、地元伝承会の田上さんが「その土地に残る伝承は教科書なんかには残らないので語り継いで残していく必要があるからね。郷土に伝わる伝説がこうして商品化され、商品とともに後の世に伝えられることを喜ばしく思います。」と言ってくださいました。
「純米吟醸 蛍丸」は山都町の伝承と共に、本当に沢山の人の思いをのせて、山都町から皆様の元へと旅立っていきました。
以上は、2015年8月23日菊陽町図書館で行われた
【第2回、初心者向き日本刀講座「熊本ゆかりの刀 ~同田貫と蛍丸~」】
での講演内容をまとめたものです。
↓菊陽町図書館さんもブログでレポートを書いていただきました↓
http://kikuyo-lib.hatenablog.com/entry/2015/08/27/182512
↓↓↓創業1770年・通潤酒造ホームページ↓↓↓
デザインの話から中に入れるお酒の話まで
返信削除大変おもしろく読ませて頂きました☆
瓶に刀が入ったバージョンも,何かイベント限定で
頒布したら面白そうですね.
どこかで見つけて,ぜひ購入させて頂きたく思います!
地震の影響で大変な状況かと思いますが,
頑張って美味しいお酒を造り続けて下さい(^^)
ブログのコメントを中々チェックできず、返信が遅くなり申し訳ございませんでしたm(_ _)m
削除楽しく読んで頂けたとのことでありがとうございます!
デザイナーさんも中に刀入れたら面白いのに、と言われますけどやはり食品では難しいです(^_^;)
今は大変な時期が続いていますが、出来ることから少しずつやって進んでいこうと思います!応援ありがとうございます(^^)